あらすじ
試験管ベイビーが当たり前になった世界。遺伝子操作によって生まれたヒトと、一般的な生殖方法によって生まれたヒトには決定的な違いがあった。それぞれ適正者、不適正者と呼ばれ、就ける職業にも差があった。
通常の性交にって生まれたヴィンセントは、体力面に遺伝子的なハンデを負っていた。ヴィンセントはそれにも挫けず、幼い頃から夢見ていた宇宙飛行士の夢を叶えるため、遺伝子を詐称し、遺伝子的エリートしか入れない宇宙開発会社に入社する。
詐称する遺伝子は、生まれながらに一流の遺伝子を持ったものの事故によって車椅子生活を余儀なくされたジェロームのもの。ジェロームに姿形を似せ、ジェロームの遺伝子サンプルを配置することで、ヴィンセントは「遺伝子エリートのジェローム」として宇宙飛行の夢を目前にしていた。
しかしヴィンセントが乗る予定のロケットの打ち上げまであと2週間と迫った時、奇妙な殺人事件によってヴィンセントの正体が追い詰められていく・・・。
演出
美しい
とにかく美しいです。Apple社の製品のような、無駄のなく洗練された世界観。また黄色がかった風景が幻想的な雰囲気を出しています。(仮に鮮明な映像だったら雰囲気ぶち壊しな感じもします)
2001年宇宙の旅を彷彿とさせる、シンメトリーの構図の多さ。DVDのジャケットも顕著にシンメトリーが意識されてますよね。
そして映像としての対称性の他、概念的な対称性もかなり意識されているように思います。
たとえば、DVDジャケットは卵子と土星(木星かな?)が左右のシンメトリーに配置されていますが、これはミクロとマクロの配置でもあります。
同じく、上下に男と女が対照的に配置されています。
ストーリーの中でも、
- 遺伝的に劣る兄と、遺伝的に優れた弟
- 遺伝的な障害を持ちながら完璧を目指すヴィンセントと、完璧な遺伝子を持ちながら障害をもってしまったユージーン
といった具合にわかりやすい構図が種々でてきます。
無駄なセリフが無い
台詞が少ないのも特徴。一つ一つのセリフが引き立ちます。特に後半で主人公が自分の可能性を主張するセリフがぐっと目立っています。
納得できるストーリー
SFとして「ぶっ飛び過ぎてない」ところが非常に好印象。現実との地続き感があります。口唇についたサンプルから、キスした相手の遺伝子すらも解析して遺伝情報を提供してくれる世界。(ここでも、浮ついた気持ちで遺伝情報を調べに来る女性と、深刻な心持ちで遺伝情報を調べに来るヒロインが対照的に配置されています。)
服装や車のセンスも50年代が意識されていて、目新しさは無いものの逆に洗練されて時代に依存しない美しさがあります。(そういえば、検問のシーンにあった長いトンネルは、Blade Runnerにも出てきたトンネルなんでしょうか?)
音楽が最高
クラシック音楽が随所に配置。特に中盤のピアニストの音楽はほれぼれします。繊細で美しく、音楽を聴くためだけにこの映画を見ても損ではありません。
総評
今まで観た中でNo1の映画。これからどんなに良い映画がでてきても、この作品は常に10番以内に入っていると思います。
イーサン・ホーク ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2003-11-21
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