『論語の読み方』の概要
聖書研究者としても有名な山本七平氏が論語を解説した著作。
- 聖書と比較していること
- 通読順ではなく体系的に解説順を整頓していること
- 注釈書や現代の派関連本についても触れていること
が大きな特徴。
聖書との比較
いわく、「聖書を知るためには論語を知らなければならないし、論語を知るためには聖書を知らなければならない」。
古典中の古典である両書は、注釈、解釈の歴史であり、ともに社会に強く影響を与え続けてきた。
『聖書の常識』で山本七平が述べたように、聖書は「契約の書」であったが、論語は必ずしも契約書ではない。
両書とも社会に秩序をもたらす書だが、神との契約によって自己を律する発想の聖書と、あくまで内なる倫理観によって自己を律する発想の論語というような、対照的な違いがある。
体系的な整理
論語は決して難解な書籍ではないが、あくまで言行録という形をとっており、話題に関して体系的な整理が行われているわけではない。
その問題点を踏まえ、著者である山本七平は話題を整理している。
すなわち、
- いま、なぜ『論語』なのか
- 偉大なるリアリスト 孔子の素顔
- 「有教無類」 生涯学び続ける精神
- 「礼楽」人間社会反映の方法
- 「信」人間性を見抜く基準
- 「下学」人間を作り上げる基盤
- 「上達」人望を得るための条件
- 「仁」人それぞれの歩むべき道
といった具合である。
関連本への記述
山本七平氏はこの本を読むにあたってたくさんの関連本を読みあさっており、多数の書籍紹介がある。
なかでも中島敦の『弟子』と、宮崎市定の『論語の新研究』は多数の引用があり、氏がたいへんに参考にしていたことがよくわかる。
とくに、中島敦の『弟子』は論語の基礎知識がなくても十分に楽しめる教養小説だが、論語についていくらかでも知識がある人が読むと抜群の面白さになる。
『論語の読み方』のまとめ
- 論語は、聖書と並んで世界に与えた名著
- 論語の歴史は注釈と誤読の歴史でもある
- 関連本も楽しめる
論語に関する書籍では、下村湖人の『論語物語』や中島敦の『弟子』に一歩を譲りますが、論語の概説を知るには良い本だと思います。
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