Barry Lyndon(バリー・リンドン):1975

バリー・リンドンのあらすじ(ネタバレ)

概要

地方出身の貴族の若者が欧州を股にかけ成り上がり、ただの田舎の貴族に堕ちるまでを描いたお話。

ストーリー全体が対になっており、

  • アイルランドでの生活
  • 決闘
  • 成り上がり
  • intermission
  • 失墜
  • 決闘
  • アイルランドへの帰国

といった構造です。

最初の決闘

レドモンド・バリーは、アイルランドの片田舎に生まれた、爵位を持たない帰属の息子。父は馬をめぐる決闘で死に、叔父からの援助を受け母と二人で暮らしていた。初恋の相手をめぐり、英国出身の軍人と短銃で決闘をし勝利したバリーは、警察の追及を逃れてダブリンへ向かう。

英国での軍属

ダブリンへ向かう途中で追い剥ぎにあってしまい、生活のために途中の村で募集されていた軍に入る。悲惨な戦争と大事な友人の死をきっかけに、脱出を考えるようになる。将校に化けて脱出するチャンスを得たものの、同盟国プロシアの将に見破られてしまう。

プロシアでの軍属

バリーは再度、一般兵卒として戦場を駆けることになった。プロシアの規律は将に甘く、私刑が横行しており、バリーも仲間への鞭打ちなどを加えていた。

フランス軍との戦闘で中将を助けた勲功から、バリーは警察に転勤を許される。

プロシアでの二重スパイ

警察で命じられた仕事はスパイ。アイルランド出身の賭博師シュバリエの召使になることを命じられる。しかし故郷を同じくするシュバリエと心を開き、二重スパイとなり、プロシア警察を欺く道を選ぶ。

シュバリエと共謀してイカサマを行い、賭けで貴族を食い物にする生活。ある日、一人の貴族から決闘の挑発を受ける。バリーは警察に事実を伝えた。警察は国内の有力者同士での決闘を避けたい。そのためにシュバリエは警察から国外退去処分を通告される。

バリーはシュバリエに化け、護送されながら堂々と国外に脱出した。シュバリエは前日に脱出していた。

賭博師としての流浪の生活

バリーとシュバリエは賭博術の権威として、豊かだが流浪の生活が始まる。賭博好きの上流階級の貴族を相手に、イカサマで稼ぐ生活。

支払いを拒否する貴族からは、バリーが剣の決闘で回収した。そんな中、上流貴族であるリンドン家の妻であるレディー・リンドンに一目惚れする。

リンドン家の当主としての栄華なる生活

レディー・リンドンと結婚式を行い、急死したリンドン卿の後釜として正式にリンドン家の人間になる。嫡男も生まれ、栄光の生活が始まるが、前リンドン卿の正式な子であるブリンドンとの確執は顕在化しつつあった。「爵位を得なければ、ブリンドンに家を奪われる」と母から忠告を受けたバリーは、賄賂やパーティを駆使して爵位をえるための工作を始める。

失墜

しかし浪費するばかりで一向に貴族になれない。そんな中、ブリンドンの挑発に乗り、社交界の面前でブリンドンに暴行を働いてしまう。社交界から見放されたバリーは、自身の息子の存在を心の支えにし、なんとか生活していたが、落馬事故でその息子も亡くした。

妻であるレディー・リンドンは精神に異常をきたし、バリーはアルコール中毒になる。

経営的事情でクビにされたチャプレンが、リンドン家の悲惨な状況をブリンドンに伝えると、ブリンドンはリンドン家の再興を決意する。ブリンドンはリンドン家に行き、バリーとの決闘を申し込む。

最後の決闘

最初の決闘と同じく、使用する武器は短銃だった。これまでバリーは決闘で負け知らずだったが、ブリンドンに情けをかけたために負傷、バリーは決闘に負ける。左足を切断するほどの怪我を負ったバリーは、ブリンドンからの指図によってアイルランドに追放される。

バリー・リンドンの演出

戦闘シーン

ライフル登場以前の戦争。横列に構えるフランス軍に、盾もなくこれまた横列で前進するイングランド軍。勇ましい軍楽をバックに、人がバタバタと倒れていきます。

「いくらなんでもこんな戦術はないだろう」と思うのですが

  • 指示伝達手段が声によるものだったため、戦闘で勝利するには陣の維持が必須だった
  • 散開戦術では、横列に構えた銃隊に各個撃破される

といった理由から実際に行われていたそうです。恐ろしい。

そういえば「軍歌のバルツァー」や「皇国の守護者」でも同様の描写があった気がします。

照明とカメラ

この映画の見どころの一つである照明。当時の世界を再現すべく、室内照明はロウソクだけ。足りない光量を補うため、NASAが開発した超高感度カメラを使うこだわりよう。室内で貴族が賭博を行うシーンなどはため息が出るほどの美しさです。

技法

登場人物にズームしていたカメラがズームアウトしていき、雄大なローロッパの自然が広がる、というカットが多数あります。これが大変効果的で、人間ドラマの汚さからふっと気が休まります。醜い人間模様と美しい景観を対比させているのでしょう。

バリー・リンドンの総評

エンターテイメントではなく芸術です。18世紀をそのまま再現したような世界。監督がキューブリックということもあり、圧倒的な安心感がありました。

ワンカットワンカットをとことん味わい尽くせる逸品。オススメです!

 

by カエレバ

 

illwax