The Clockwork Orange (時計じかけのオレンジ):1972年

時計じかけのオレンジのあらすじ

ナッドサット言葉と呼ばれる若者スラングがはびこっている世界。4人のドゥルーグ(不良グループ)のリーダーであるアレックスは、ミルクプラス(ドラッグ入りのミルク)を飲みながら、どんなウルトラ(暴力)を働くか考えていた。ある日、未亡人を男性器のオブジェでトルチョック(殴り)し、殺してしまい、収監されてしまう。無難に収監生活を過ごしていたアレックスは、ある治療を受ければ2週間で釈放されるとの噂を知る。

時計じかけのオレンジの演出

映像の対称性

この作品でも、キューブリック特有の対称性がありますが、他の作品に比べると少なめです。

対称性が明快なのは、ビリー・ボーイ一派が女性に暴行を働こうとしているシーンや、殺害される貴婦人の登場シーンです。

特に前者は、美しい映像と音楽のために、行われることの残忍さが際立っています。

暴力表現

この映画の見どころはなんといっても斬新な暴力表現です。特に、アレックスがSinging in the rain (雨に歌えば)を歌いながら郊外の夫婦を暴行するシーンは顕著で、40年前の映画とは思えない衝撃があります。

他にも、婦人が男性器のオブジェで撲殺されるシーンは、死の瞬間にポップな絵画を早回しで差し込むことで、直接的な表現を避けつつインパクトのあるシーンになっていました。

マルコム・マクダウェルは若者の危うさ、狂気を良く表現しており、大変良い演技でした。いわゆる「いじめっこ」の精神状態に通じる物があると思います。暴力は悪意ではなく無邪気によって引き起こされるのかもしれません。

時計じかけのオレンジの総評

素晴らしい映画ですが、誰にも薦められる映画ではありません。

暴力表現の嫌悪を乗り越え、表現の斬新さを味わい、人間の精神状態について考察したい、といった方はぜひ、一度見てみることをオススメします。

時計じかけのオレンジの余談

余談ですが、主演のマルコム・マクドウェルは生粋のいたずら好きで、いろいろな逸話があるそうです。

薄毛の友だちのクセが、両手の爪をすり合わせること。理由を聞くと、「こうすると髪が増えるという話を聞いたから」だという。

それを聞いたマルコムは、アフロヘアーで毛量がすさまじい友だちのアメフト選手に「試合中に爪をすり合わせる仕草をしてくれ」という。

マルコムがウチでパーティを開き、アメフト選手と薄毛の友だちを呼んで、ちょうどTVで放映されていたアメフト選手の試合を観戦していると、爪をすりあわせる動作が画面に写り、薄毛の友だちは驚愕する。

「あの動きは知っている!なぜあんな動きをするの?」と薄毛の友だちがアフロヘアーのアメフト選手に聞くと、予めマルコムと示し合わせていたセリフ、「髪がはえると聞いたからさ。三年前はこれでも禿げていたんだ」といって、薄毛の友だちは大興奮。それを遠目で見ていたマルコムとその妻は、遠巻きに見て泣くほど大笑いしたとか。

 

by カエレバ

 

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